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死の舞踏 -ハンス・ホルバイン版-

骨が生きている人間と共に描かれ、時には手を取り合い、時には人々を襲い連れ去ろうとする。

死者と生者が共存するこれらの絵図は「死の舞踏」と呼ばれ、そこに着想を得た交響曲から昨今のゴスロリブームにまで引き継がれるに至っているが、その起源は14世紀頃よりヨーロッパに広がった黒死病(ペスト)に端を発している。

ヨーロッパ全土で人口の1/3の人々が亡くなったと言われる黒死病の大流行により、当時は常に死が身近な存在として意識されていた。

そのため「死を忘れるな(メメント モリ)」という言葉が広まり、教会や墓地に「死の舞踏」と呼ばれる壁画が描かれるようになった。

 

ンス・ホルバインが「死の舞踏」の木版画を制作したのは1526年のことだと言われている。

描かれたモチーフは「天地創造」に始まり「審判の日」で結末を迎える。その中で、皇帝や国王、商人、農民など身分を問わず訪れる死が、骸骨とそのシチュエーションを通して象徴的に示されている。

モチーフ自体は従来の「死の舞踏」と変わらないが、時は宗教改革運動が起こり、キリスト教会の権力腐敗が露呈し始めていた時期であった。

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「堕落」と「追放」

版の一枚一枚を見ていくと、農民や子供達を描いた図版にはややもすると温かいまなざしも感じられる。

その一方で、聖職者や裁判官らの図版には、収賄や不正の様子も描かれており、ハンス・ホルバインが感じ取っていた不条理な社会に対する批判が映し出されていることがわかる。

このように死の平等性を示しつつ社会風刺をも盛り込んだホルベインの木版図版は、その批判性とも相まって大好評を博し、出版者同士が版権を争うほどであった。

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「裁判官」に描かれた汚職の様子と骸骨

本書では、ホルバインが手がけた「死の舞踏」シリーズの木版画53枚を当時出版された底本の質感を残しつつ編集し、電子書籍として再構成しました。

ハンス・ホルバインの不朽の名作が宿す寓意と芸術性を、是非ご堪能ください。

Hans Holbein

ハンス・ホルバインの肖像画

ハンス・ホルバイン / Hance Holbein

1497年〜1543年 肖像画家・木版画家

ハンス・ホルバインはルネサンス期に活躍したドイツの画家。南ドイツのアウクスブルクに生まれ、各地を旅しながら画の研鑽を重ねた。

1515年頃より画家として本格的に活動を始め、1536年よりイングランド王ヘンリー8世の宮廷画家となった。精緻な質感描写に特徴のある肖像画を数多く残すとともに、本作「死の舞踏」シリーズの木版画でも名を残している。父も同姓同名で祭壇画に多くの傑作を残した画家であったため、子ハンス・ホルバイン (Hance Holbein the younger)として区別される。

死の舞踏 -ハンス・ホルバイン版-

死の舞踏 - ハンス・ホルバイン【著者】ハンス・ホルバイン 【編集】LOGDESIGN publishing

【ページ数】70ページ

【出版日】2014年12月5日(第1版)