手塚治少年が小学5年生の時、クラスメートが持っていた『原色昆虫図譜』(本書『原色千種昆蟲図譜』のこと)に載っていたオサムシの図版(本書第67図版)をみて、ペンネームを手塚治虫に決めたと言います。 原色千種昆蟲図譜は、刊行当時(昭和8年)まだ珍しかったカラー写真図版が総点数104点、昆虫種は表題を上回る1017種類を掲載しています。“平山修次郎という人のコレクションを並べた『原色昆虫図譜』という本が、ほしくてたまらなかった。
やっと借りてかえって、フーン、日本にはこんなにたくさん虫がいたのか、日本は広いなァ、とうなったり、目をパチパチさせたりした。
カブト虫の一種に、オサムシというのが描いてあったので、ザシキをころげまわって喜んだ。
ボクは、きょうからテズカオサムシと改名する、と決心した。”
手塚治虫
(講談社版全集第395巻『手塚治虫エッセイ集』第6巻)
一枚一枚の図版には整然と昆虫標本が配置され、手足や触覚の先まで整えられた見事な昆虫図譜に仕上げられています。まるでCGのような正確さは、序文で校閲者の松村氏が指摘している通り、著者・平山修次郎氏によって制作された標本の完成度の高さを物語っています。
カラー写真が一般に普及する以前、この図鑑を手にした人々の驚きがどれほどのものだったか、その感動は想像するに余りあります。
本書では、刊行当時の図版とテキストを原本に忠実に高解像度画像化し、復刻版として再編集しました。
手塚治虫少年をはじめ、数々の少年少女たちを魅了した昆虫図鑑。
その魅力を思う存分にご堪能ください。
著者・平山修次郎のプロフィール
1889年(明治22年)生まれ。昆虫学者であった平山氏は、東京・井の頭に個人の昆虫博物館「平山昆虫博物館」を開き、多くの昆虫図鑑を手がけるなど、漫画家・手塚治虫氏をはじめ、多くの著名な昆虫愛好家に影響を与えた人物でした。
平山昆虫博物館は昭和30年頃に閉館してしまいまいますが、本書が出版された昭和8年頃は昆虫採集ブームの後押しもあり、多くの人々が訪れました。
氏が制作した昆虫標本は比肩するものがない高い完成度を誇っており、本書の図版に使われている標本もすべて氏が作成したもの。
その所蔵する標本コレクションは全4000種3万頭以上に及んだと言われています。
原色千種昆虫図譜
【著者】平山修次郎 【編集】LOGDESIGN publishing
【ページ数】363ページ
【出版日】2015年2月25日(第1版)