その起源は14世紀中頃よりヨーロッパに広がった黒死病(ペスト)に遡ります。
黒死病の大流行と度重なる戦火により、一時はヨーロッパ全土で人口の1/3の人々が亡くなったといわれ、当時はそれほどまでに常に死が身近な存在として意識されていました。
“メメント モリ(死を忘れるな)”という言葉が広まり、教会や墓地に「死の舞踏」の壁画が描かれました。
やがて宗教改革にも通じる人々の死生観は「死の舞踏」の図像によってヨーロッパ全土に伝播していったのです。
骸骨(=死)と人とのメッセージのやり取りが綴られた八行詩と、その関係を象徴する木版画によって本書は構成されています。
木版画の図柄は、1669年に取り壊されたパリの聖イノサン墓地の聖堂に描かれていた壁画を写し取ったものだと言われています。
当時の識字率はまだ低く、ラテン語を読み書きできる者は主に聖職者や商人らに限られていたため、ヴィジュアル的に意図を伝達してくれる寓意図像の重要性は、今以上に高かったのです。
死の舞踏を題材とする書物は15世紀以降、数百年にわたって出版され続けており、各時代の世相を取り入れた脚色がなされていきますが、本書は比較的初期の「死の舞踏」を反映した木版画を掲載しています。中世ヨーロッパの世界観と死生観が凝縮された「死の舞踏」木版画の数々、じっくりとご堪能ください。
死の舞踏 -木版画集-
【著者】不明 【編集】LOGDESIGN publishing
【ページ数】43ページ
【出版日】2015年1月23日(第1版)